街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

2019-01-01から1年間の記事一覧

2019年の終わりに考えること

今から10年前、2009年。忌野清志郎、アベフトシ、志村正彦、僕の好きなミュージシャンたちがこの世を去った。いつの間にかそんなことを忘れて日々を過ごしているけど、通勤中のイヤホンからは毎日当然のように彼らの音楽が今も流れている。本人が死んでも作…

正義の味方になりたかった

悪を倒して人々を守る、ヒーローに憧れていた。ヒーローになれなかったとしても、大切な人を守るために地球防衛軍に志願するんだと思っていた。大人になって正義が戦っているのは悪だなんて単純なものじゃなく、別の側の正義だということが少しずつわかって…

Message in a Bottle

インターネットに言葉を書くのは手紙を詰めた瓶を海に流す行為と似ている。あの人に宛てた僕の手紙は知らない誰かに読まれながら電子の海を漂い続ける。たぶん僕がいなくなった後も。大半の人にとってそれは目に映って流れていくだけのもので、きっと記憶に…

ありふれたガールフレンドの名前

仕事柄、郵送されてきた書類で顧客の個人情報を確認することが多い。その中に見覚えのある名前を見つけ、一瞬ドキッとする。生年月日で別人だとわかった。まぁわりとよくいる名前だ、学生時代に少しの間だけ恋人同士だった女の子の名前。 ロックスターに憧れ…

踏切のあの子は人違い

自堕落な生活を続けて預金残高と体重ばかりが減っていく。たまるのは埃と吸殻と心のもやもや。かろうじて洗濯物は片付けてる。街でよく似た人を見かけたから、今夜は君のことを考えて過ごしてる。あの日橋から投げ捨てた思い出はちゃんと海まで辿り着けたの…

つながりたがり

なんの気無しに宝くじを買ってみた。当たったら何に使おう。欲しいものもやりたいことも思い浮かばない。昔はたくさんあったのに、つまらない大人になっちゃったな。わたしは大金を手にしたことがなくて、でも食べるのに困ったこともない。懸賞なんかは結構…

少し猫背のままで

目が覚める、テレビをつける。誰かの笑い声が耳元を通り抜ける。どうにか体を起こし、窓を開ける。コーヒーを入れる、食パンは焼かずに食べる。洗濯機を回す。隣人に少し気を遣いながら、換気扇の下で煙草に火をつける。今日何をして過ごすか考えているうち…

Mellow Melodious

海沿いの街で暮らしていた。ある日どこかの国のミサイルが近くの海に落ちて、その爆発で起きた高波に街は呑まれたけれど、誰も死ななかった。水浸しになった街を別れた奥さんと息子と3人で歩く。あまり詳しくは覚えてない、楽しかった気はする。目が覚めて僕…

ロードムービー

映画を観ていた。旅の中で様々な人や出来事に触れ、時には独りで自身と対話する。そしてまた退屈な日常に戻っていく、少しだけ成長した主人公。エンドロールが終わった後も彼の人生は続いていくんだろう。傍観者の僕も自分が少し変われたような素敵な勘違い…

さかなのいなくなった夜に

寒い冬の日。雨上がりの河川敷で暖め合うように寄り添い、話をした。暑い夏の日。湿った風の吹くベランダで一緒に煙草を吸った。そろそろ忘れ始めた夜の記憶。 今君はその笑顔を誰に向けているのだろう。あんなに好きだった君の顔もぼんやりとしてくる。すれ…

夜更かし少女のためのハードボイルド

捜査の長引いた殺人事件を解決した刑事は息子へのプレゼントを抱えて線路脇の道を歩いている。電車が通る、同時に突然男がぶつかってくる。電車とともに走り去る男、崩れ落ちる刑事の脇腹にはナイフが。抱えていた袋から転がり落ちたおもちゃのパトカーのサ…

スターダストベイビー

星屑59分発の列車に乗った。跳ねた。行き先はわからない。 列車はかつての乗客たちの、わたしからすれば他人の夢の残骸の中を走り続ける。きっとわたしの夢もいつか星屑のひとつになるのだろう。 だけど今はまだ車窓から星屑を眺めながら先を急いでいる。行…

夏のおまけ

あの日君が煙草を投げ捨てた道の近くには川が流れていて、やがて海に出る。そういえば、あの浜辺は去年埋め立てられたらしい。

昔、僕の隣で寝ていた人が

今どこで何をしているかは知らないが、昨夜は僕の夢の中にいたらしい。 彼女には夢があって、それに向かってそうとうな努力をしていた。当時の僕には未来なんてまったく見えていなくて、見ようともしていなかった。彼女にもそれがわかっていたらしい。別れ際…

ビニール傘

ビニール傘のチープさが好き、と彼女は言う。いくらでも替えの利く、君のする恋愛みたいだね。僕も替えのうちの一人だけど。雨はもう上がって、ひらいた傘越しに夕焼けが見える。どうやら明日は晴れるみたいだ。

孤独気取り

そこには懐かしい顔ぶれが並んで、彼らはみんな楽しげで。わたしもなんだか嬉しくて、とても心地よかった。夕べはそんな夢を見た。夢の中でさんざんはしゃいだからか、目が醒めると寝汗でぐっしょり。さらに寝坊してしまった。だけど職場の人たちはみんな優…

端っこの彼女

海沿いの街に住んでいた彼女は穏やかな微笑みを絶やさない。それはきっと、人付き合いが苦手な彼女なりの処世術でもあったのだろう。 彼女が「お寺で手を合わせていると心が落ち着く」と言いうので二人でたまに寺院にでかけたりした。話は逸れるが、目の前で…

ロックバンド気取り

君が好きだと言ったロックバンド気取り。僕は彼らが嫌いだった。雰囲気ばかりを気にして中身がないうえに、「明けない夜はない」なんて歌うから。夜に明けてほしくなかった。そしたらずっと一緒にいられると思っていた。 それでも朝はまたやってきて、君もど…

Remember Scarlett

午前3時、携帯が鳴る。近頃ではなるべく健康的な生活を送るように心がけているので眠っている時間だけど、夕べは具合が悪く早めに眠りについたせいでなんとなく目が覚めていた。ディスプレイには懐かしい名前が表示されている。少し迷って、出ようとしたとこ…

うつくしいしあわせ

わたしは自分の名前を気に入ってない。よく言い間違えられるし、まぁそれだけではないのだけど。 俺はいいと思うよ、君の名前。でも俺も自分の名前は嫌いだな。みんな苗字かあだ名でしか呼んでくれない、本当は下の名前で呼ばれたい。この間なんか、飲み屋で…