街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

ありふれたガールフレンドの名前

仕事柄、郵送されてきた書類で顧客の個人情報を確認することが多い。その中に見覚えのある名前を見つけ、一瞬ドキッとする。生年月日で別人だとわかった。まぁわりとよくいる名前だ、学生時代に少しの間だけ恋人同士だった女の子の名前。

ロックスターに憧れて不健康な生活を送っていたその頃の僕は、友人から「明日死んでも良いような生き方をしているやつ」と評されていた。彼女にも俺は27歳で死ぬんだ、なんてよく言っていて、今思えばかなり恥ずかしいやつだったのだ。昔はそれがかっこいいと思っていたんだよ。
彼女と再会したのは数年前、共通の友人の結婚式。すっかり大人の女性になっていた。もっとも向こうは3児の母で夫婦関係も良好なようだったので、そこからの色っぽい展開はなかったけれど。その後しばらくして彼女はSNSに僕のことを書いていた。
『当時は30まで生きないだろうなーみたいなことを話していたんだけど、もちろん今も元気だし変わらずロマンチストだし、人生っておもしろいな〜』だってさ。いい歳して夢見がちなのは認めざるを得ない、ロックだなんだと言ってたくせに結構まともに仕事してるのがおもしろかったのか。そういうつもりではなかったのかもしれないけど。

彼女は夫の仕事の都合で地方へ引っ越してしまったので今後会う機会もないだろうけど、また同じ名前を見かける度に僕は彼女とのあまり多くないエピソードを思い出すんだろうな。