街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

2022-01-01から1年間の記事一覧

2022年の終わりに考えること

ここ何年か現状維持さえできればいいと思って過ごしている。それでもあちこちに転機は落ちているようで、ふとした拍子に踏んづけては悩んだりどうでも良くなったりしている。秋に引っ越しをした。特に前に進みたいと思ったわけでもなかったけれど、留まる理…

夜になってから花は咲く

残業終わりの帰り道で空を見上げたり、カメラを空に向ける人々に遭遇した。宇宙人でも攻めてきたのかしら、と思ってそちらに顔を向けると、赤黒く染まった月が浮かんでいる。そういえばテレビのニュースで言っていたっけな。その時は確かに自分も見たかった…

壊れた指輪も小さな思い出

引っ越しを間近に控え、面倒な手続きと格闘し、ひたすら部屋を片付ける。7年間暮らしている間に溜め込んだ思い出はゴミ袋10個分近くになった。にも拘わらず散らかった部屋。そもそも僕は好きなものに囲まれ埋もれて過ごしたい、断捨離なんてくそくらえな主義…

夏の終わりと夕暮れ空

生来のものぐさな性格のせいで引っ越しを先延ばしにしていたものの、看過しがたい事案が立て続けに起こったことによりついに重い腰を上げた。ときめきのない引越しだとは思いつつ賃貸情報サイトで見つけたおしゃれな物件に一目惚れし、すぐさま内見の申し込…

なのに、ばかみたいに空は青い

夏が終わりに近づいて、例年通り思い入れのあるようなないような曲を聴きながらセンチな気分に浸る。特別夏らしいことはしていないけどひたすら暑かった、でも少し短かったかもしれない。勤務先では尤もらしい理由をつけて希望退職が勧奨され、お世話になっ…

クリームの夢を見た朝に

幹線道路に架かる歩道橋の前で立ち尽くしていた。初めて見るような、懐かしいような景色が目も前に広がっている。約束の時間はとうに過ぎてしまっていて、どう言い訳をしようか考える。職場から電話がきた、荷物が届いたけれど誰もいないから受け取って欲し…

だからさよならは言わない

二回り歳上の友人は声が大きくて酒好きで煙草好きで女好きで、破天荒な人だった。当時平凡な大学生だった僕にとって彼と遊び回る日々はとても刺激的で、講義なんかより多くのことを学べたと思う。僕が大学を辞めた後も相変わらず一緒に飲み歩いたり、引っ越…

ヒイラギ

息子の卒業式に行ってきた。疫病の影響で会えない期間が長かったとはいえ、知らない間にずいぶん大きくなっていた。これからさらに会う機会も減って、彼は僕の知らないところで大人になっていくんだろう。そもそも彼にとってはもはや僕と一緒に暮らしていな…

嘆くには、あまりにも時が

年が明けてすぐ、ドライヤーが爆発した。たまにしか使わない職場のシュレッダーはいつも僕の番で満タンになり、家を出た途端に靴紐はちぎれる。思いがけないタイミングで元妻から再婚の報告を受け、疫病のせいでめっきり会えていなかった息子と会える機会も…