街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

夏のおまけ

あの日君が煙草を投げ捨てた道の近くには川が流れていて、やがて海に出る。そういえば、あの浜辺は去年埋め立てられたらしい。

昔、僕の隣で寝ていた人が

今どこで何をしているかは知らないが、昨夜は僕の夢の中にいたらしい。 彼女には夢があって、それに向かってそうとうな努力をしていた。当時の僕には未来なんてまったく見えていなくて、見ようともしていなかった。彼女にもそれがわかっていたらしい。別れ際…

ビニール傘

ビニール傘のチープさが好き、と彼女は言う。いくらでも替えの利く、君のする恋愛みたいだね。僕も替えのうちの一人だけど。雨はもう上がって、ひらいた傘越しに夕焼けが見える。どうやら明日は晴れるみたいだ。

孤独気取り

そこには懐かしい顔ぶれが並んで、彼らはみんな楽しげで。わたしもなんだか嬉しくて、とても心地よかった。夕べはそんな夢を見た。夢の中でさんざんはしゃいだからか、目が醒めると寝汗でぐっしょり。さらに寝坊してしまった。だけど職場の人たちはみんな優…

端っこの彼女

海沿いの街に住んでいた彼女は穏やかな微笑みを絶やさない。それはきっと、人付き合いが苦手な彼女なりの処世術でもあったのだろう。 彼女が「お寺で手を合わせていると心が落ち着く」と言いうので二人でたまに寺院にでかけたりした。話は逸れるが、目の前で…

ロックバンド気取り

君が好きだと言ったロックバンド気取り。僕は彼らが嫌いだった。雰囲気ばかりを気にして中身がないうえに、「明けない夜はない」なんて歌うから。夜に明けてほしくなかった。そしたらずっと一緒にいられると思っていた。 それでも朝はまたやってきて、君もど…

Remember Scarlett

午前3時、携帯が鳴る。近頃ではなるべく健康的な生活を送るように心がけているので眠っている時間だけど、夕べは具合が悪く早めに眠りについたせいでなんとなく目が覚めていた。ディスプレイには懐かしい名前が表示されている。少し迷って、出ようとしたとこ…

うつくしいしあわせ

わたしは自分の名前を気に入ってない。よく言い間違えられるし、まぁそれだけではないのだけど。 俺はいいと思うよ、君の名前。でも俺も自分の名前は嫌いだな。みんな苗字かあだ名でしか呼んでくれない、本当は下の名前で呼ばれたい。この間なんか、飲み屋で…