街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

踏切のあの子は人違い

自堕落な生活を続けて預金残高と体重ばかりが減っていく。たまるのは埃と吸殻と心のもやもや。かろうじて洗濯物は片付けてる。街でよく似た人を見かけたから、今夜は君のことを考えて過ごしてる。あの日橋から投げ捨てた思い出はちゃんと海まで辿り着けたの…

つながりたがり

なんの気無しに宝くじを買ってみた。当たったら何に使おう。欲しいものもやりたいことも思い浮かばない。昔はたくさんあったのに、つまらない大人になっちゃったな。わたしは大金を手にしたことがなくて、でも食べるのに困ったこともない。懸賞なんかは結構…

少し猫背のままで

目が覚める、テレビをつける。誰かの笑い声が耳元を通り抜ける。どうにか体を起こし、窓を開ける。コーヒーを入れる、食パンは焼かずに食べる。洗濯機を回す。隣人に少し気を遣いながら、換気扇の下で煙草に火をつける。今日何をして過ごすか考えているうち…

Mellow Melodious

海沿いの街で暮らしていた。ある日どこかの国のミサイルが近くの海に落ちて、その爆発で起きた高波に街は呑まれたけれど、誰も死ななかった。水浸しになった街を別れた奥さんと息子と3人で歩く。あまり詳しくは覚えてない、楽しかった気はする。目が覚めて僕…

ロードムービー

映画を観ていた。旅の中で様々な人や出来事に触れ、時には独りで自身と対話する。そしてまた退屈な日常に戻っていく、少しだけ成長した主人公。エンドロールが終わった後も彼の人生は続いていくんだろう。傍観者の僕も自分が少し変われたような素敵な勘違い…

さかなのいなくなった夜に

寒い冬の日。雨上がりの河川敷で暖め合うように寄り添い、話をした。暑い夏の日。湿った風の吹くベランダで一緒に煙草を吸った。そろそろ忘れ始めた夜の記憶。 今君はその笑顔を誰に向けているのだろう。あんなに好きだった君の顔もぼんやりとしてくる。すれ…

夜更かし少女のためのハードボイルド

捜査の長引いた殺人事件を解決した刑事は息子へのプレゼントを抱えて線路脇の道を歩いている。電車が通る、同時に突然男がぶつかってくる。電車とともに走り去る男、崩れ落ちる刑事の脇腹にはナイフが。抱えていた袋から転がり落ちたおもちゃのパトカーのサ…

スターダストベイビー

星屑59分発の列車に乗った。跳ねた。行き先はわからない。 列車はかつての乗客たちの、わたしからすれば他人の夢の残骸の中を走り続ける。きっとわたしの夢もいつか星屑のひとつになるのだろう。 だけど今はまだ車窓から星屑を眺めながら先を急いでいる。行…