街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

夜になってから花は咲く

残業終わりの帰り道で空を見上げたり、カメラを空に向ける人々に遭遇した。宇宙人でも攻めてきたのかしら、と思ってそちらに顔を向けると、赤黒く染まった月が浮かんでいる。そういえばテレビのニュースで言っていたっけな。その時は確かに自分も見たかったはずなのに忙しさにかまけて忘れてしまっていた、彼らがいなければそのまま空を見上げることはなかっただろう。いつの間にかつまらない大人になってしまったな。周囲に倣って携帯のカメラを構える、設定がよくわからずにストロボが光ってしまい、その一瞬だけ月蝕よりも注目を浴びることとなった。