街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

クリームの夢を見た朝に

幹線道路に架かる歩道橋の前で立ち尽くしていた。初めて見るような、懐かしいような景色が目も前に広がっている。約束の時間はとうに過ぎてしまっていて、どう言い訳をしようか考える。
職場から電話がきた、荷物が届いたけれど誰もいないから受け取って欲しい、と。いつもの配達のお兄さんが持ってきたのは小型のヘリコプターで、僕はため息をつきながらロープを巻きつけて搬入用のスロープを引きずってビルの屋上を目指す。何度も壁にぶつけてヘリは傷だらけで、プロペラも最後の一本になったあたりでようやく屋上にたどり着く。雨が降っていた。
屋上の片隅でレインコートを羽織ってクレーンゲームに興じる見知った顔。彼に会うのは何年振りだろう。卒業式の直前に故郷で大きな地震があって、彼は地元に残ることを選んだ。そんな彼にこんなところで会うとは思いもしなかった。
次第に雨は激しくなり、彼は自転車に乗って帰っていった。傘のない僕は、雨を避けるためにひとり地下街へ潜る。