街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

嘆くには、あまりにも時が

年が明けてすぐ、ドライヤーが爆発した。たまにしか使わない職場のシュレッダーはいつも僕の番で満タンになり、家を出た途端に靴紐はちぎれる。思いがけないタイミングで元妻から再婚の報告を受け、疫病のせいでめっきり会えていなかった息子と会える機会もさらになくなりそうだ。この流れだと僕自身が疫病に罹ったりだとか、近頃増えている無差別的な事件に巻き込まれたりとかもあり得る気がしてきた。疫病はともかく、無差別は嫌だ。どうせなら、僕のことを心底恨んでいたり憎んでいたりする誰かにきっちり仕留めてもらいたい。ちょうど生き続けなければいけない理由も一つなくなったところだし。
僕にとってはあまり良くないことが続いてはいるけれど、違う角度から考えればそうでもないのかもしれない。新しいドライヤーが売れ、誰かがシュレッダーのゴミを交換する手間は省け、応急処置で紐が左右で違う僕のスニーカーは職場で多少の笑いを生んだ。元妻と息子はきっと幸せになってくれるだろう。その時に自分が近くにいたかったという気持ちはあるけれど。愛のある日々を、どうか、あなたに。