街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

夏の終わりと夕暮れ空

生来のものぐさな性格のせいで引っ越しを先延ばしにしていたものの、看過しがたい事案が立て続けに起こったことによりついに重い腰を上げた。ときめきのない引越しだとは思いつつ賃貸情報サイトで見つけたおしゃれな物件に一目惚れし、すぐさま内見の申し込みをする。動き出しさえすればその後の行動はわりと速い方なのだ。
お目当ての物件はいわゆるデザイナーズマンションというやつだったらしく実際に見てもなかなかおしゃれで、でもそれだけだった。他にも数件回ってちょうど高層階の物件に差し掛かったタイミングで窓の外にとても綺麗な夕暮れの景色が広がっていて、感動するってこういうことだったな、と思い出した気がした。それ以外に特別なものは何もない部屋だったけれど、きっとそれだけで十分だったんだろう。即決した、当然。
住み始めてまた同じ感動が得られるかはわからないけれど、その期待で煩わしい手続きは乗り切れそうだとは思っている。