街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

シモツキハズカム

彼女は猫のような人だった。感情と表情がころころ変わり、僕はいつもそれに振り回される。だからなのかは知らないが、猫にも好かれることが多かったと思う。彼女の部屋によく野良猫が遊びに来ていた時期があって、雨で濡れた時にはタオルで拭いてあげたりしていた。怪我をしているのを見かけたきり、来なくなってしまったらしいのだけれど。僕はといえば餌をやろうとして引っ掻かれて、痛さよりも悲しさの方が勝ったのを覚えている。昔から猫にはあまり好かれないらしい。猫は好きなだけに、悲しい。猫には好かれない。また、どこかへ行ってしまった。