街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

主役になりたかった君へ

週末に映画を観てきたらしい職場の後輩が、主演の俳優が僕にそっくりだったという。そんなことはないと謙遜したものの、今をときめく人気俳優と似ていると言われて悪い気はしない。もっとも彼女は数日前に夢の中で猪から僕に助けられたとかで、好感度フィルターのようなものがかかっているみたいだった。どちらにせよ、あくまで人気俳優と彼女の夢の中の僕の功績であって、僕自身は何もしていない。
これまでもあの映画のあの登場人物に似ているだとか、そんなことを言われることは何回か経験してきたけれど、結局「誰かに似ている」と言われても誰かの方が主役なのであって僕はそのおまけでしかない。
子供の頃は自分こそが世界の主役だ、くらいの感覚で生きていたような気がするし、そうじゃないことがわかってしまった学生時代だってそれでも負けたくないと思っていた気がするけど。いつ諦めてしまったんだっけかな。
そんなわけで主役どころか何者にもなれていないけれど、通行人Bでも悪くない時もあるよ。つまらないことも多いけど。かつて、主役になりたかった君へ。