街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

Picture Perfect

通勤の道すがら、歩道橋を渡る。橋の下には高速道路が通っていて、その先に遠くの高層ビル群が見える。かつてのわたしの居場所はその中にあった。
あの頃は毎日に必死でしがみついて余裕が無くて、自分がどこにいるかさえよくわかってなかったのかもしれない。わたしがあのビルを初めて見上げたのはそこから振り落とされた後だった。
それからしばらくはビルを見るどころか外にすら出られなかったりもしたけど、運良くのんびりとした職場が見つかって少しづつ日常を取り戻した。収入はだいぶ減ってしまったけど、あんなに無理して働かなくても生きていけるんだってホッとしている。
今でもあのビルにしがみついたり振り落とされたりしている人たちがいるんだろう。だけど一足先にドロップアウトしたわたしにはもう関係のない話で、毎朝橋の上か眺めている。ただの綺麗な景色として。