街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

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疫病が流行しているので不要不急の外出を控えるようにと通達が出された。元々人混みも得意ではなかったし、気乗りしない飲みの誘いもなくなった。新しい生活様式は僕にとって特別苦ではない、はずだった。家に籠る休日が続きすぎて映画を観ても漫画を読んでも次第になにも感じなくなる。かといって創作するモードにもなかなか切り替わらない。きっと気心の知れた友人と飲み明かす夜もたまには必要なんだろう。終電を過ぎた頃の中身のない会話や、その場では天才的と思ったはずが冷静になって思い返すと使い物にならないアイディアだとか、そういったものたちが作り出すえも言われぬあの時間の中に心が動かされるなにかが存在してるんだと思う。ニュースで緊急事態宣言のさなかに遊びまわる人たちを見て小馬鹿にしていたけれど、結局僕も不要不急を愛しているみたいだ。