街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

どこの空も夕日は

春の連休前、勝にいちゃんを亡くした。疫病のせいで葬儀に参加させてもらえず、二ヶ月経った今もまだお別れができていない。
僕がまだ幼い頃。夜は両親が仕事であまり家にいなかったのだけど、たまに勝にいちゃんが遊びに来てくれるのが楽しみだった。
僕もよく遊びに行った。いつだったか勝にいちゃんの部屋で古いカメラを見つけた。当時は自動巻きのフィルムカメラが主流で、手巻き式のそのカメラは逆に新鮮でかっこよく、レバーを引いたりシャッターを切ってみたり、夢中で遊んだ。帰り際、勝にいちゃんはそのカメラを僕にくれた。その時の勝にいちゃんの顔はよく覚えていないけど、きっと笑顔だったと思う。子供が好きな人だったから。
事故の怪我と病気で勝にいちゃんは部屋に篭もりがちになり、正月くらいしか顔を合わせなくなっていた。今年にいたっては疫病のせいで正月の集まりもなかった。もっと会っておけばよかったとか、そんなことを思っても仕方がないのはわかっている。
もらったカメラはいつしか壊れてどこかへ失くしてしまったけれど、僕はそれからよく写真を撮るようになった。写真の勉強をしたり、仕事にしていた時期もあった。長いこと写真から離れてしまっているけど、そろそろ。