街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

Bedtime Story

昔々、あるところに1枚の写真がありました。そこには産まれたばかりの息子を抱く妻とその夫、かつての幸せな家族が写っています。だけどもうその家族は存在していません。彼女は思い出を丸めて捨て、彼はそれをゴミ箱から拾いました。そして彼は家族と過ごした部屋を後にしたのです。それから何年もの間、お酒を独りで飲みながらぐしゃぐしゃの写真を眺める日々が続きます。しかし彼は写真を飾ることができませんでした。見るのはいいけれど、見られている気がするのはつらかったのです。ある夜のこと、彼はまた写真を見ようと思いました。するとどうしたことでしょう、いつもしまってあるはずの場所に写真がありません。他の場所も探しましたが見つかりません。彼が酔っ払っているから見つけることができないのでしょうか。それとも、そんな写真などそもそもはじめから存在していなかったのでしょうか。

さて、夜も更けてきましたね。今夜はもうおやすみなさい、続きはまたいつか。