街角にて

どこかの街の、誰かの物語。

あなたは私の世界の外で

引っ越すことにしたから合鍵を返してほしいと連絡が来て、久しぶりに彼女を訪ねた。僕がこの部屋を出てどのくらいどろう。そのうちこの部屋にも知らない誰かが住むことになるのだろう。知らない人は存在してない人と同じだとしたら、共有してない時間は無いのと同じ、そう言っていた人がいた。別々に過ごした数年間が無いのだとしたら、と考え始めてすぐにやめた。あの時こうしていれば、こう言っていれば、なんて意味が無い。僕らのことなんて誰も知らない、存在しない二人。それでも僕は、何年経っても思い出してしまうんだろうな。